sue-aのブログ

消防/救急に関わる業務に携わっており、その時々に悩んでいたことを皆さんと共有したいです。一般の方々にも、意外と知られていない/誤解されている消防・救急のリアル事情を伝えます。

【救急隊の本音】救急隊の仕事は”病名当てクイズ”ではない3つの理由

「救急隊の仕事って何ですか?」

以前、”体動困難の原因検索”について、記事を書きました。

 

sue-a.hatenablog.com

 

その際にも、救急隊の大事な仕事として、適切な医療機関へ早期搬送することを伝えましたが、その根底となる”救急隊の仕事の意味”について深堀りしていきます。

わたしは勤続12年目の現役消防士(救急救命士)。

人口20~30万都市の消防で働いています。

わたしのブログは救急隊の活動メイン。

消防署での働き方や生活のリアルについては、父の運営する別ブログで発信中です。

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”消防署のぶっちゃけ話”を書いています!

 

本題に戻ります。

 

この記事では、

・救急隊の仕事の本質を知りたい。

・救急業務の中で救急救命士の立ち位置って実際どうなのか。

・救急隊は救急救命士になる必要があるのか。


 

 

「この辺りを記事にまとめました。救急救命士の立場で、本音を書きたいと思います。」

この記事を読むことで、

・救急隊の仕事って病名当てクイズなの?

・救急隊がやるべき勉強って?

この辺りを理解でき、救急隊員を目指している人たちが何を学んでいけばよいのか明確になります!

繰り返しますが、本記事の結論である

「救急隊の仕事は病名当てクイズではない」

ことを解説していきます。

それでは行きましょう!

 

救急隊の仕事は、適切な医療機関へ傷病者の状態を悪化させず早期搬送すること 

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結論は見出しのとおりです。

「適切な医療機関へ傷病者の状態を悪化させず早期搬送すること」

これが救急隊の目的です。

それを裏付ける根拠を3つ伝えていきます。

1, 法令で掲げられる救急隊の仕事の根拠

2, 【悲報】救急資機材ではやれることは少ない!

3, 【よく考えてみよう!】傷病者が求めていることは「早く病院へ連れて行ってほしい」そこだ!

一つ一つ解説していきます。

法令で掲げられる救急隊の仕事の根拠

第三条 救急隊員は、傷病者を医療機関その他の場所に収容し、又は救急現場に医師が到着し、傷病者が医師の管理下に置かれるまでの間において、傷病者の状態その他の条件から応急処置を施さなければその生命が危険であり、又はその症状が悪化する恐れがあると認められる場合に応急処置を行うものとする。

〔本条改正・平三消告四〕

救急隊員の行う応急処置等の基準 | 告示 | 総務省消防庁

(救急活動の基本)

第10条 救急活動は,傷病者の観察及び必要な応急処置を行った後に,傷病者の症状に適した医療機関に速やかに搬送することを原則とする。

救急業務規程

ここに挙げた規定は、総務省消防庁が「救急隊の業務内容」について明文化したものの抜粋文です。

書いてある内容をまとめると、

・傷病者をしっかり観察し、必要な応急処置をすること

・傷病者の状態に適した医療機関に速やかに搬送すること

これらを原則としていると書いてあります。

つまり、救急隊の本質が

「適切な医療機関へ傷病者の状態を悪化させず早期搬送すること」

であることの根拠となります。

 

「今と昔では、救急隊のあり方が変わってきたと言われています。

・血糖測定と低血糖傷病者に対するブドウ糖投与

・増悪するショックに対する心肺停止前の静脈路確保と輸液

クラッシュシンドロームに対する心肺停止前の静脈路確保と輸液

私たちの行える処置や考えなくてはいけないことは確実に以前より増しています。」

 

とはいえ、救急隊の本質は法律にも書いてあるように”早く傷病者の状態に適した医療機関へ搬送する”。これを目的としています。

・とりあえず診断の段階ではよくわからない…

・救命士なのだから、絶対に静脈路確保しなければ…

 

 

 

「こういう思考パターンに入ってしまい、無駄に現場滞在時間を延ばす救急隊もいます。しかし、そこはある程度の的が絞れたら搬送に踏み切る勇気をもつべきです。」

 

この後に話しますが、私たち救急隊は”やれることが限られている”。

なるべく現場滞在を短く傷病者の状態に適した医療機関へ搬送するスキル/知識が求められます。

【悲報】救急資機材ではやれることは少ない!

結論、私たち救急隊が持つ救急資機材ではやれることが限られています。

傷病者の病状を根本的に解決する術を持ち合わせていないからです。

唯一あるとすれば、「低血糖傷病者に対するブドウ糖投与」。

意識障害を起こしている傷病者を劇的に改善させることができます。

(もちろん意識障害が遷延するときもあるので絶対とは言えませんが)

その劇的に改善するブドウ糖投与以外では、傷病者の病状を悪化させないための”応急処置”しか私たち救急隊のできることはありません。

具体例を挙げると、

・酸素投与

体位変換

・出血に対する止血

こういったことが応急処置として、よく行います。

でも、それは傷病者の病状を悪化させないための処置です。

だからこそ、根治治療の行える医療機関へ早く搬送すべきなのです。

【よく考えてみよう!】傷病者が求めていることは「早く病院へ連れて行ってほしい」そこだ!

ここからは傷病者と傷病者の家族目線で話をします。

結論は、傷病者や傷病者の家族の”真意””を掴んだ活動を救急隊は行うべきです。

大前提、傷病者(傷病者家族)は

「今の状態が辛いから早く病院へ連れて行ってほしい」

から、救急車を呼ぶのです。

にもかかわらず、

・ああでもないこうでもないと言って、なかなか現場出発しない

・色々なことを聞かれた挙げ句、病院が決まらないので一晩様子をみて明日の朝、救急車を再度呼んでほしいと言われる

こういったことも実際に起こっています。

 

「もちろん傷病者に緊急性がないから、活動も急がず行っているのでしょうが、完全に説明不足ですよね。

時間を要するのなら、先に時間がかかることを説明するべきです。」

 

ですので、傷病者の立場に立って、どういった活動をやるべきなのか考えておくのです。

そうすることで、自ずとわかってくるはずです。早く搬送した方がいいことを!

結論です。ここまで上記した3つのことに触れてきました。

・法令で掲げられる救急隊の仕事の根拠

・【悲報】救急資機材ではやれることは少ない!

・【よく考えてみよう!】傷病者が求めていることは「早く病院へ連れて行ってほしい」そこだ!

ここから見つけられる答えは、早期搬送を念頭に置いた活動をすることです。

そう…つまり、病名当てクイズをするのが救急隊の本質ではありません!

 

 

「病名当てクイズと思って現場想定訓練をする救急隊員も多くいますが、それはあくまで、見逃してはいけない疾患を予想できるようにするための訓練です。

現場でも活かせますが、本質部分は”早期搬送”。それは肝に銘じておきましょう。」

 

救急業務の中で、救急救命士って意味あるの?

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救急救命士って救急業務の中で必要なのですか?

ここまでの話を聞いていると早く搬送するのが救急隊の仕事なんですよね?

救急救命士が行える救命処置をせず早期搬送した方がいい気がしてきますが…」

 

それに対しての答えは、救命士の処置で命を救うことは難しい…それでも”つなぎ止める”ことはできる!

だから、救急救命士も必要です。

具体的なシチュエーションを挙げていくと、

・吐血によるショック状態の傷病者に静脈路確保を実施し、搬送する。

・心肺停止状態の傷病者に気道確保と静脈路確保を実施。静脈路確保後にアドレナリン投与を行い、自己心拍が再開する。

意識障害を起こしている傷病者に対し、血糖測定を実施する。測定の結果、低血糖状態を確認。静脈路確保を行いブドウ糖投与を行う。

上記のことは救急救命士資格がないと行えない処置ばかりです。

 

「特に低血糖は、これまで意識障害を起こしていて脳卒中と判断して搬送していたケースが多い疾患でした。

低血糖状態が延長すると、意識障害が遷延してすぐ意識障害が改善しないこともあります。

血糖測定が救急救命士に行えるようになったのは救急活動を変える大きな起爆剤となりました。」

 

それだけではありません。

救急救命士として医療知識を学ぶことで傷病者の状態を把握する能力が向上します。

それは、傷病者の状態に合わせた処置を行い、また早期搬送できるメリットがあります。

・傷病者の状態を把握するスキルの向上

・傷病者の状態に合わせた処置スキルの向上

・傷病者の症状に適した医療機関を選定するスキルの向上

救急救命士として医療知識を学ぶことは、傷病者のためになることばかりです。

だからこそ、医療分野の国家資格として「救急救命士」は認められているのです。

救急救命士がいる意味は、そこにあるのだと私は思います。

ですので、「救急業務の中で、救急救命士って意味あるの?」

その回答は、

・救命士の処置で命を救うことは難しい…それでも”つなぎ止める”ことはできる!

救急救命士として医療知識を学ぶことで傷病者の状態を把握する能力が向上する

      ⬇

✓傷病者の状態を把握するスキルの向上

✓傷病者の状態に合わせた処置スキルの向上

✓傷病者の症状に適した医療機関を選定するスキルの向上

上記のスキルが向上していく!

だから、”救急現場で救急救命士は意味ない”なんてことはありません!

病名当てクイズすることが救急隊の仕事ではない。でも、勉強が大切!

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救急隊として働いてきた経験からみた意見を述べさせてもらうと、

「救急のことについて学び続けることが大切」

こう思います。

なぜなら、日々医療技術も進歩し、医療の常識が変わってきているからです。

一例を挙げると、

これまで脳梗塞の治療は、t-Paによる血栓溶解療法が主流でした。

だから、救急現場で

「発症時刻は約4時間前…t-Pa適応ではないか。麻痺は戻らないのか…」

と考えていました。

しかし今では、血栓回収療法が主流になりつつあります。

カテーテルを脳の血管へ送り、血栓自体を回収する治療法です。

その場合だと、6時間以内に治療を開始することができれば、傷病者の予後が良いと言われています。

 

 

 

「実際、医療機関主催の勉強会で学びました。

現在は新型コロナウイルスの影響で勉強会への参加も減りましたが、定期的に最新の治救急医療の知識を学び続けています。」

こういった知識のアップデートを続けていくことで、”過去の医療知識”ではなく、最新の治療方法をイメージしながら搬送先を探すこともできます

プラスαで「現場経験」から吸収していこう

もう1つ大切な話をします。

それは、医療知識のアップデートと匹敵する大事な部分です。

それこそ「現場経験」です。

この経験値を積み上げることこそ、救急隊員が現場で判断、行動力を養う訓練にもなっているのです。

話は変わりますが、松下幸之助氏は、このような言葉を残しています。

”百聞百見は一験に如かず”

”塩の辛さ、砂糖の甘さは学問では理解できない。だが、なめてみればすぐ分かる”

松下幸之助

この言葉から学ぶことは、松下幸之助氏も、まず行動してみる重要性を説いているのです。

・机に向かい救急の勉強をひたすらし続けている

・現場想定訓練をやり続けている

 

 

 

 

「もちろん出動がない中、合間を縫って勉強や訓練に励むのは有意義なことです。

ただ、それだけに固執して”訓練しているから現場は大丈夫!”という考えを持っていては成長しません。」

重要なことは、

勉強や訓練をする→現場経験を積む→勉強したこと+現場で学んだこと=これをつなげる

これを続けることが”できる救急隊員”になる手段と、わたしは考えています。

ですので、

私が言いたいのは、病名当てクイズすることが救急隊の仕事ではありません。

ただし勉強や現場経験を積むことも大切です!

勉強や現場経験を積むことで、より病態を絞れて、適切な医療機関に早く搬送することができるからです。

救急隊員なら、これを忘れないでほしいです。

まとめ:救急隊の仕事の本質を知り「できる救急隊員」になろう!

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まとめです。

救急隊の仕事の本質。それは、

「適切な医療機関へ傷病者の状態を悪化させず早期搬送すること」

と話してきました。

 

 

「その本質部分を知って、救急活動を続けていれば必ず”できる救急隊員”になっていきますよ!

私自身も"できる救急隊員"と呼ばれるように日々自己研鑽に励んでいます。」

この記事を読んでくれている読者さんは

・救急隊員をやっている

・救急隊を目指している

・将来、消防署で救急隊として働きたい

こういった人たちだと思います。

 

 

「病名当てに時間ばかりくうような頭でっかちな救急隊員になるないでください。

私も日々気をつけながら救急活動に励んでいます。」

 

今回は以上です。