sue-aのブログ

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第63回 救急救命士学力テストの解説

 ⬇こちらの解説です。

 

sue-a.hatenablog.com

  

1.30歳の女性。妊娠33週目である。本日、家事をしていたところ下腹部痛を感じた後、急に破水したため驚いた夫が救急要請した。救急隊到着時観察所見:すでに児が娩出されており、新生児は鼻腔内吸引で顔をしかめ、弱々しく泣く。心拍数は88/分。全身にチアノーゼを認め、四肢はだらりとして動かない。臍帯は臍帯クリップで挟み切断する。母親に主訴および持続的な性器出血はなく、バイタルサインは安定している。

新生児に対して、次に行うべき対応はどれか。1つ選べ。

答え 空気で人工呼吸を行う

新生児救急蘇生法についての設問である。

出生直後の気道確保・呼吸促進の処置にもかかわらず、新生児がぐったりしていて呼吸がみられない場合や、心拍数が100/分に満たない場合(新生児の心拍数は大人の2倍であり、心拍数60/分未満は徐脈である)は、次のような処置を開始する。

口腔内、鼻腔内を軽く吸引した後、バッグ・バルブ・マスクで、胸の上がりがみえる程度の送気を1回1秒から2回続ける。この送気は、酸素でなく空気でよい。

救急救命士標準テキスト10 p.674

 

2.16歳の男子。1年以上にわたり不登校であった。本日、急に「人の声が聞こえる。人が襲ってくる」と意味不明な言葉を繰り返し興奮しているため、心配になった母親が救急要請した。救急隊到着時観察所見:傷病者は落ち着いており、声掛けに対して頷くのみで表情の変化はない。主訴はなく外見や呂律、バイタルサインに異常は認めない。

この傷病者に考えられる疾患はどれか。1つ選べ。

答え 統合失調症

統合失調症の症状は、陽性症状、陰性症状、認知機能障害の大きく3つに分けられる。

陽性症状は幻覚(幻聴が多い)、妄想、思考の混乱、異常行動など、簡単にいうと”正常人には存在しないもの”の症状である。

急性期、再発増悪期によくみられる。

統合失調症の症状は、上記傷病者と当てはまる。

救急救命士標準テキスト10 p.680

 

3.38歳の男性。飲酒後に自宅2階の階段から足をすべらせ転落したため妻が救急要請した。救急隊到着時観察所見:意識 JCS1。呼吸数 12/分。脈拍 56/分、整。血圧 88/54 mmHg。SpO2値97%。皮膚冷感はなく下肢の運動感覚の異常を訴えた。腹式呼吸が観察され、左頬と左前額部に挫創と少量出血を認めたが、他の外傷はない。

次に行うべき適切な処置はどれか1つ選べ。

答え 静脈路確保

脊髄損傷による神経原性ショックが疑われる。

第3腰髄節よりも上での脊髄損傷は、交感神経系の機能に影響を与える可能性がある。

第5胸髄節よりも高位での脊髄損傷で、交感神経系が広範囲に遮断されて血管の緊張が保てなくなり、代償的な心拍数の増加と心収縮力の増強も抑制され、血圧が低下する。

ただし、脊髄損傷による血圧低下は中等度にとどまるため、脊髄損傷に高度の血圧低下を伴っていれば、出血の合併を疑うべき。

神経原性ショックに対するショック輸液は、結論有益と記載されている。(救急救命士標準テキスト10 p.469参照)

救急救命士標準テキスト10 p.469

 

4.医療機関内における暴力レベルの分類で誤っている組合せはどれか。1つ選べ。

答え レベルⅣ 軽度な後遺症が残る傷害

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医療機関内における暴力レベルの分類

 

救急救命士標準テキスト10 p.280

 

5.65歳の男性。1人暮らしである。訪問した友人が、居間で倒れているのを発見し救急要請した。救急隊到着時観察所見:意識JCS200。呼吸数8/分。脈拍40/分、不整。血圧80/50mmHg。 SpO2値90%。酸素10ℓ/分投与下にバッグ・バルブ・マスクで補助呼吸を開始した。舌根沈下が著しいので経口エアウエイを挿入した際に大量の嘔吐を来した。口腔内を吸引して換気を再開したところ、SpO2値が80%台に低下し、聴診でラ音が聞かれるようになった。

この「嘔吐」について、リスクマネージメントの観点から正しいのはどれか。1つ選べ。

答え 事後検証の対象にすべきである

救急現場における医療事故に対する対応についての設問。

今回のケースでは、インシデントではなくアクシデントに該当する。

事故が発生した場合には、事故発生状況やその防止策について検証を行う。

救急救命士標準テキスト10 p.281

 

6.空気感染するのはどれか。1つ選べ。

答え 水 痘

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感染経路と代表的な感染症および個人防護具

救急救命士標準テキスト10 p.284

 

7.標準予防策(スタンダードプリコーション)について誤っているのはどれか。1つ選べ。

答え 経済的なことは無視してよい

標準予防策は、

①疫学的に根拠があること

感染症にかかわらず、汗を除く唾液・鼻汁・喀痰・尿・便・腹水・胸水などすべての湿性体液には感染性があるものとして取り扱うこと

③空気・飛沫・接触伝播による感染予防策を含んでいること

④単純で実施しやすいこと

⑤経済的であることに重点を置いて定められている

救急救命士標準テキスト10 p.283

 

8.感染について誤っているのはどれか。1つ選べ。

答え 飛沫核感染はサージカルマスクで防御できる

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空気(飛沫核)感染に対する感染防止用個人防護具は「手袋、ガウン、ゴーグル、N95マスク」である。

救急救命士標準テキスト10 p.284

 

9.消毒薬について正しいのはどれか。1つ選べ。

答え グルタラールは芽胞に有効である

芽胞をもつ微生物も含め、すべての微生物に対する殺菌力がもっとも高い消毒薬の一つである。

救急救命士標準テキスト10 p.288

 

10.救急現場での針刺し事故への対応として適切なのはどれか。1つ選べ。

答え HIV陽性血液の事故では予防的治療薬投与を受ける

HIV抗体が陽性の、または陽性が強く疑われる傷病者に使用した針で事故を起こした場合、抗HIV薬の予防内服の要否が専門医によって判断される。

救急救命士標準テキスト10 p.291

 

11.針刺し事故で感染する危険が最も高い病原体はどれか。1つ選べ。

答え B型肝炎ウイルス

針刺し事故後に無処置であったときのHBVの感染率:平均30%程度

HCVの感染率:平均2〜3%

HBVの感染率:0.3%程度

救急救命士標準テキスト10 p.291

 

12.惨事ストレスが長期間見過ごされる「隠れた被災者」の背景要因に当てはまらないのはどれか。1つ選べ。

答え 意志疎通の円滑な職場環境

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隠れた被災者

 

救急救命士標準テキスト10 p.295

 

13.急性型のPTSDの発症時期はどれか。1つ選べ。

答え 1カ月~3カ月

悲惨な状況や恐怖の状況での活動を体験した後、ストレス反応が1カ月以上持続するもので、持続期間や発症時期により、急性型(持続期間が3カ月未満)、慢性型(3カ月以上)、遅発型(6カ月経過後に発症)に分類される。

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救急救命士標準テキスト10 p.295〜296

 

14.デブリーフィングについて正しいのはどれか。1つ選べ。

答え 災害発生から24~72時間以内に実施する

心理・精神保健の専門家を交えて、可能であれば災害から1日ないし3日以内に行うが、この時期にとらわれる必要はなく、事態が終息した後、自分自身の考えを少し整理できた頃が最適と考えられている。

救急救命士標準テキスト10 p.296〜297

 

15.ストレス反応とその症状の組合せで正しいものはどれか。1つ選べ。

答え 覚 醒 ー 過敏、過剰に用心深くなる

原因となった心的外傷的な体験が、意図しないのに繰り返し思い出されたり、夢に登場する(再体験)、体験を思い出すような状況や場面を、意識的あるいは無意識的に避けつづけるという症状、および感情や感覚などの反応性の麻痺(回避・反応麻痺)、交感神経系の亢進状態が続くことによる不眠やイライラ(過覚醒)などである。

救急救命士標準テキスト10 p.684

 

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